こんにちは。
ブランディングコンサルタントの堀田周郎(ほりたのりお)です。
社長さんとブランディングの話をしていると『うちは、商品を仕入れて売っているだけなのでブランドなんて関係ないよ』と言われることがあります。
しかし、これは間違いです。
すべての会社にブランドは必要です。
そこで、そんな社長さんには、
私は、商店ブランドづくり(商店ブランディング)をお薦めしています。
商店ブランディングとは?
商店ブランディングとは、
- その店で買う魅力を、想定するターゲットに伝えてお店をブランド化するという考え方です
- その店の機能的価値や情緒的価値、自己表現的価値を伝えて、お店をブランドにしていく手法です
機能的価値というと難しそうですが、皆さんのまちに 新鮮でおいしい魚介類を扱っていると評判の魚屋や、品揃えが充実していることで人気の文房具店はありませんか? これらのお店は立派な商店ブランドです。
しかし、機能性価値だけでは強いブランドにはなれません。
商店ブランドには情緒的価値も必要です。
情緒的価値とは、「接客態度が良い」「お店の雰囲気が好き」「親しい店員さんがいるのでこの店で買いたい」といった感情から起こるブランド価値です。
そして、より強い商店ブランドをめざすには
自己表現価値も必要です。
自己表現的価値とは、「この店の客であることが誇らしい」「購入できる自分の立場が嬉しい」「購入することで社会貢献できる」といったお客さまの理想のライフスタイルや価値観を表現する為に必要なブランド価値です。
まず最初は価値の再確認
商店ブランディングに成功すると、
店名を見たり、聞いたりしたときに 安心感、信頼感、親近感、愛着感、満足感 といった良いイメージを連想するようになります。
その結果として ・・・
- 同業者の中から価格競争なしで選ばれる
- お客さまが新規客を紹介してくれる
- 従業員やアルバイトの確保が容易になる
- 取引先との条件交渉が有利になる
- テレビや新聞、雑誌から取材申込が入る
といった良いことが次々に起こります。
では、どうすれば
商店ブランドをつくることができるのでしょうか?
まず、第一歩は
お店の魅力の「再確認作業」から始まります。
- 店舗スタッフ全員で魅力を探し出していきます
- 常連客や取引先に聞くのもよい方法です
- 第三者の専門家の意見も必要です
お店の魅力と言っても、
商品、サービス、品揃え、外観、内装、店内の雰囲気、接客品質、客層、立地、経営方針、歴史、人物 など多岐にわたりますが、再確認作業のポイントはできるだけ多くの意見を集めることです。
そうして、見つけた魅力をさらに
「想定するターゲットにとって価値があるか否か」の視点から精査することで、お店の本当の魅力(価値)を探し出していきます。
お店の価値が見つかったら、次に
- 誰に対して
- 何を伝えて
- どう思われたいか?
といった
ブランドの基本コンセプトをつくっていきます。
1.誰をターゲットに想定するのか?
年齢、性別、居住地、職業、年収、家族構成、ライフスタイル、価値観 など、どんなお客さまをターゲットとして想定するかによって、今後のブランディングの方向性や手法がまったく変わってきます。ここは慎重に決めなければいけません。
理想のお客さま像が決まれば
先ほど再認識した数ある価値の中から
2.想定したお客さまに伝えるべきお店の価値は何か?
を考えていきます。
そして、最後に
3.想定したお客さまからどんなお店だと思われたいか?
というブランドの目標を決めます。
商店を経営されている方は自分の店に置き換えて、
基本コンセプトづくりができているか否かを、ぜひ一度チェックしてみてください。
ただし、お店が提供する価値を
「安さ」だと設定するのはNGです。
安売りで集客したお客さまのリピート率は低く、より安い店ができると簡単に浮気されてしまいます。安売り競争は、中小企業や個人商店には立入禁止の領域です。
たとえ、良い品を安く売っているお店だったとしても、安さを強調するのではなく「別の価値」をアピールするべきです。
ブランドコンセプトに「安売り」は禁物です。
商品、ネーミング、意味合いを見直す
次に、現状の見直しが必要です。
まず、最初に見直すのは「商品」です。
あなたの店の商品は、あなたの店でしか買えないものですか?
スーパーと同じ肉しか扱っていない肉屋はブランド店にはなれませんが、店主の目利きで高品質の肉を仕入れている肉屋はブランド店になれます。
同じ花を仕入れても、洗練されたアレンジメントができるおしゃれな花屋はブランド店になれます。店主のセンスの良さが伝わってくる 雑貨屋や家具屋もセレクトショップとしてブランド店になれます。
あなたのお店は、
今の商品のままでブランド店になれるでしょうか?
また、取扱商品を絞り込んで、
ブランド店になるという方法もあります。
大阪難波にある「波屋書房」はプロ御用達の料理本専門書店。同じく難波の「とらや商店」は天然素材から化繊まで3万点以上の布を取り揃え、好みの布地が必要なだけ買える布地の専門店です。
そのほかにも、麻布十番にある塩専門店「塩屋 まーすやー」、南青山の万年筆専門店「書斎館」など、商品を絞り込み専門化することでブランド店になっている例はたくさんあります。
次に見直すのは「ネーミング」です。
皆さんのお店の名前は、○○文具店、○○鮮魚店 のようにひと目で取扱商品がわかる店名でしょうか? それとも、取扱商品や提供している価値をイメージすることができない店名でしょうか?
ネーミングは、ブランドの構成要素(ロゴ、カラー、メッセージ、パッケージなど)の中で最重要だと私は思っています。
後者の場合は、思い切って店名を変えてしまうという方法もあります。
しかし、店名と企業名が同じ場合は商号変更の手続きが面倒ですし、これまでつくった看板や印刷物がすべて無駄になってしまいます。
そんな場合のお薦めは、
店名に「タグライン」や「キャッチフレーズ」を追加するという方法です。
「吸引力の変わらないただ一つの掃除機 ダイソン」「お、ねだん以上 ニトリ」などはタグラインの有名な例ですが、先ほど専門店として紹介した とらや商店や書斎館も「服地・布地のデパート とらや商店」「Pen Boutique 書斎館」といったように言葉を追加することでお店の価値をわかりやすく表現されています。
タグラインとは:顧客と潜在顧客に対して、その企業やブランドが持つ感情面と機能面のベネフィット(優れた点)をわかりやすく伝えるための表現。(Wikipediaより)
また、取り扱っている商品の
「意味合い」を見直すことも必要です。
モノ余りの現在、性能や品質がすぐれているというだけで商品は売れなくなってきました。そこで、この商品を使うことでどんな体験や経験を提供できるかという価値をお客さまに伝えることが必要になってきました。
- ふとん屋は、寝具を売るのではなく「心地よい眠り」を提供する
- パン屋は、パンを売るのではなく「豊かな朝の食卓」を提供する
- 珈琲店は、コーヒーを売るではなく「くつろぎの時間」を提供する
といった考え方が必要です。
提供する価値が「モノ」から「コト」に変わると、取扱商品も変わってきます。
たとえば「心地よい眠り」を提供するふとん屋ならば、CDやアロマオイルを販売しても良いと思いますし、寝室のリフォームを提案するのもアリになってきます。ぜひ、自分のお店に当てはめて考えてみてください。
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さて、ここまで読んだところで、
基本コンセプトづくりをもう一度思い出してください。
- 誰に対して
- 何を伝えて
- どう思われたいか?
ひょっとして
2番の「何を伝えて」と
3番の「どう思われたいか?」
の答えが微妙に変わってきてはいませんか?
もし、変わっていたら
たぶんそれは「正解」です。
ブランディングで
基本コンセプトづくりは一番大切な作業です。
この作業をいい加減にすれば、
その後のブランディングはやればやるほど迷路に陥ってしまいます。
じっくりと時間をかけて、しっかりと練り上げていくことが大切です。
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・ブランディング コンサルタント・堀田周郎(兵庫県姫路市)

堀田 周郎

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