こんにちは。
ブランディングコンサルタントの堀田周郎(ほりたのりお)です。
東洋経済ONLINEで興味深い記事を読みました。
地方を滅ぼす「成功者への妬み」のひどい構造_「3つのネチネチ」で成功者はつぶされていく (木下 斉 : まちビジネス事業家)
今回のブログは
この記事を読んで感じたことを書いてみたいと思います。
「妬み」がまちを衰退させる
記事の要旨は以下の通りです。
- 地域活性化に資する事業において、すばらしい成果や業績をあげた人の共通点は「地元から離れれば離れるほど、その評価が全体的に高くなる」傾向にある。
一方地元では、大きな成果をあげたとしても「賛否両論」になることが一般的である - 「地域活性化の壁」とも言えるのは、挑戦者を「馬鹿」と決めつけ、挑戦者が成功すると「あいつはずるい」と足を引っ張ろうとする「妬み」とも言える人間関係にある
- 成功者の潰し方には「事業に予算をいれて潰す」「事業を横取りして奪って潰す」「風説の流布で人格否定をして潰す」がある。ほとんどの人はこのような妨害に嫌気がさしてその地域を去り、より挑戦に寛容である地域へ移動する
- 「新規創業支援」「移住定住促進」という政策において重要なのは、 新たな挑戦に寛容であり、成功者を称えるという基本的なスタンスを地域の多くの人が共有できるか、にある。
いかがですか?
まちづくり関係者の方や、地元密着で商売をされている方は思わず「あるある」とうなづいた方も多いと思います。
これは商売人だけの話ではありません。行政関係者でもまちを愛し、まちづくりを実践・成功させてきた人が(同僚、上司の妬みから?)閑職に追いやられる姿を私は何度も目にしてきました。
「妬み」があることを前提に考える
「妬み」という感情をネット検索してみると
- 私たちの祖先が暮らした資源が乏しい時代では他人に資源を取られることが生命の危機につながっていた。妬みは進化の過程で「自分を守るための感情」として必要だった
- 「他人よりもたくさんのものを得たい」という感情は「たくさんの中からベストのパートナーを見つけ出し、他よりも素晴らしい子孫を残す」という競争原理が働いている
などと解説されています。
どうやら、自分が持っていないものを、持っている人に対して「羨ましい。妬ましい」と思うことはごく自然な感情、しかたがない感情のようです。
だとすると、
地域活性化に寄与する事業展開をするときには、最初から人には「妬み」という感情あることを前提に考えていく必要があります。
ふくやの辛子明太子
有名な話なのでご存じの方も多いかもしれませんが、明太子の「ふくや」さんの事例は参考になるかもしれません。
博多名物の辛子明太子は、ふくや創業者の創業者・川原俊夫氏が韓国のタラコのキムチ漬けを、試行錯誤しながら現在の形に仕上げました。(※辛子明太子誕生には諸説があります)
ふくやが有名になると、中州市場には明太子を買い求めるたくさんのお客さんが訪れたのですが、中には間違えて斜め前の漬物屋に来る人もいたそうです。その漬物屋の主人が俊夫氏に「ふくやの商品をうちの店に置かせてくれ」と言ったところ、俊夫氏は「卸はやらない」「代わりにおたくも明太子を作ったらどうか」と製法をあっさりと教えました。その後、斜め前と隣の2軒の店も、自分たちで作った明太子を販売。1967~68年ごろには現在大手の明太子メーカーが次々と開業しましたが、そこでも俊夫氏は惜しみなく製法を伝えていったそうです。
すごいと思いませんか。
ふくやが明太子を独占、販売していたら、ふくやの珍味として一部のお客さんに愛されていたかもしれませんが、今のような博多名物にはならなかったと思いますし、「辛子明太子」というカテゴリーも存在していなかったと思います。
実際、辛子明太子が全国に広がったのは、他社が量販店やデパート、駅や空港に置くなど、それぞれの取り組みがあったからだと俊夫氏も回想しています。
地域に貢献し、地域から愛される企業になる
これが、「妬み」を回避する答えのひとつです
私も以前、二代目社長・川原政孝さんの時にふくやさんにお伺いしたことがあるのですが、地域のイベントに積極的に貢献するふくやさんは地元から愛され、「ふくやが博多にあって良かった」と言われるような存在でした。(平成20年からは社員も地域貢献に参加できる社内制度を実施されています)
逆に、たくさん儲けて地元に税金を納めていたとしても、地域から愛されていない企業は「妬み」を買うことがあるので注意が必要です。
水木しげるロード
こちらも成功事例として有名なのでご存じの方も多いかと思いますが、水木しげるロード(鳥取県境港市)も参考になるかと思います。
地元出身の漫画家・水木しげる氏の人気妖怪キャラクターのブロンズ像を商店街歩道に設置したところ、そのユニークな取り組みがマスコミで大きく取り上げられ、多くの観光客が訪れる鳥取県有数の観光スポットへと育っていきました。
今では、米子と境港の間にJR鬼太郎列車が走り、町中を妖怪キャラクターの着ぐるみが歩き回り、商店街及び周辺の商店には妖怪饅頭、妖菓目玉おやじ、一反木綿焼き(いか焼き)、妖怪のラテアート、ゲゲゲの鬼太郎パンなどの商品が並び、妖怪神社があったり、銀行のキャッシュコーナーも妖怪の家風にアレンジされているなど、町全体がさしずめ水木しげるの妖怪テーマパークといった状況です。
でも、「妖怪でまちづくりなんて、最初はきっと反発も多かっただろうな」と思って調べてみると、やっぱり最初は「妖怪の銅像設置で成功した前例はない」「ただでさえ寂しい道に妖怪を置くとは何事だ」「駐車できる車道スペースも狭まる」と商店主からは猛反対があったそうです。
目をつぶれば、当初反対していた店主たちの顔や、やる気のある一部の商店主の頑張り、それを見ていた周りの店主たちの変化の様子が目に浮かびます。「水木しげるロード」は成功が成功を呼び、そしてまち全体に活気が戻った良い事例だと思います。
みんなで儲ける、みんなで幸せになる
これを意識的にデザインすることが、成功者への「妬み」を回避するもうひとつの答えです。
そして、まち全体が外部から高評価を受けることで、まちに対する自信と誇りを取り戻すことができ、まちは変わっていくものだと私は信じています。
関連記事:自分の店が儲かることが、まちの発展につながる |
それでも参加しない人や批判する人は仕方がありません。
「結果の平等」ではなく「機会の平等」を重視すべきだと思います。評論家はまちづくりには不要です。時には雑音に対しては無視できる鈍感力も必要だと思います。
また、「商標登録」や「製法特許」で自らが立ち上げたビジネスを守ることはもちろん必要です。この辺りは事業展開の最初の段階で押さえておくべき問題です。(ただし、ふくやさんはあえて商標や特許を取りませんでした。やっぱりすごいですね)
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次回はこの続きとして「なぜ、地域活性化が必要なのか?」といった内容について書いてみたいと思います。
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堀田 周郎

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