こんにちは。
アドバンテージマーケティングの堀田周郎(ほりたのりお)です。
ブログをご覧頂いている皆さまに2018年4月、日本地域社会研究所より発行された「脱・価格競争で売れ。実践アドバンテージマーケティング」の一部内容を少しご紹介させていただきたいと思います。
第1章 ブランディングは小さな会社が有利
◇ブランディングが変わった
私たちは日常の会話で、「あのブランドが好き」とか「このブランドは失墜した」とか、ブランドについて語ることがあります。
でも、そもそも「ブランド」って何でしょう?
ちゃんと定義できる人って少ないと思います。
ブランドと聞いて思い出す名前にはシャネルやロレックス、メルセデス・ベンツといった商品名や企業名が多いので、ブランドとは高級品や高額商品のことだと思っていたり、そのロゴマークだと勘違いしていたりする人も多いかと思います。
しかし、ブランドの事例としてよく紹介されるコカ・コーラや、氷菓の「ガリガリ君」はけっして高級でも高価でもありません。
ブランドとは、
競合する商品やサービスと区別する
お客さまの心のなかにある「価値」そのものです。
その価値をお客さまの心のなかに
刻み込むために行うコミュニケーション活動を
ブランディングといいます。
本書ではこの「ブランディング」について解説していきます。
あなたは、中小企業や個人商店の方が、大企業よりブランディングが簡単だという事実をご存じですか?
これまでのブランディングは、すでに知名度がある大企業が何億円もの費用を掛けて、テレビCMなどによってブランドイメージの認知を図る手法だったので、中小企業や個人商店には縁のないものでした。
予算を抑えて地元の広告代理店やデザイン会社に依頼したら、チープなロゴマークと広告スペースを買わされたとか、綺麗だけれど自社イメージとはまったく異なるデザインを制作されたなど、失敗例もよくありました。
しかし、世の中はインターネットの登場によって大きく変わりました。
私は、1997年にネット通販を始めたときに、大企業と同じ土俵で勝負ができるインターネットは神様からの贈り物だと思いました。それから20年がたちましたが、近年のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及を見るにつけ、ますますその思いは強くなっています。
また、パブリシティ(主にマスコミを利用した広報活動)を成功させれば、高額な費用をかけたマス広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体に掲載する広告を「マス広告」と言います)以上の訴求効果のある告知ができます。
ブランディングは、低予算でできる時代になりました。
これまでマーケティングは、販促を中心に語られてきました。
しかしモノ余りの今は、ブランディングを理解しないと、企業の規模や業態にかかわらず、お客さまから商品やサービスを選んでいただけない時代になりました。
ブランディングに不可欠な絞り込みは、シェア獲得のために八方美人的なマーケティング手法を取らなければならない大企業より、規模が小さい企業ほど簡単です。
ブランドは時間がたてば自然にできるものではありません。
播州ハムは1950年の創業でしたが、2000年にブランディングを意識するまでは、地元の人でさえ姫路にハム屋があることをほとんど知らない状況でした。
大手も含め、企業名は知っているけれど、何をしている会社かわからないという事例はたくさんあります。
ブランドは「狙って」つくるものです。
◇弱点の中に光明を見いだす
ブランディングの第一歩は、自分の会社や商品・サービスの「こうありたい」と思う理想の姿を決めて、それ「らしく」振る舞っていくことです。
従業員一万人の会社が「ブランドをつくるぞ!」と意思決定をして、それを周知徹底するのには時間がかかります。しかし、
・百人の会社なら社長が本気になれば一ヶ月で周知徹底できます
・十人の会社なら明日から変わることも可能です
・一人の会社なら決断した瞬間に変わることができます
従業員やお客さまとの距離が近いことは、
小さな会社の大きなアドバンテージ(優位性)です。
また、同族会社や、非上場会社の方がブランディングには有利です。
上場企業の雇われ社長は、任期中に結果を出す必要があります。それに比べて未上場のオーナー企業は、株主から無理な妥協を強いられることがないので、創業者の理念やブランドの精神を引き継ぐことが容易です。
松下幸之助氏のパナソニック創業の精神や、井深大氏と盛田昭夫氏が築いたSONYの革新的イメージは今も受け継がれているのでしょうか?
中小企業や個人商店の多くは、次のような悩みを抱えています。
・規模が小さい
・たくさん作れない
・販売チャネルがない
でも、安心してください。ブランド価値は企業規模に比例しません。需要に供給が 追いつかないことや、どこでも買えないことはけっして短所ではありません。
行列のできるラーメン屋が、店舗を増築したらつぶれてしまった話や、地方の名産品が全国展開したら、破綻したと言う話を聞いたことはありませんか?
「多品種を作れない」、「ローテクで古い機械装置しかない」といった悩みも、見方を変えれば「限定生産」、「守り続けた伝統の製法」といった具合に長所に置き換えることが可能です。
「短所」は少し見方を変えると「長所」に変わります。
◇SNSは社長が発信すべきです
2016年のアメリカ大統領選挙でクリントン候補がトランプ氏よりも二倍の選挙資金を使ったのに敗れましたが、トランプ氏本人が「勝因はSNSの活用にあった」と発言。トランプ陣営は相手陣営の六倍近いSNS関連費用を使ったと伝えられています。トランプ氏は大統領に就任後もツイッターで、既存メディアに対抗するかのように、歯に衣を着せない発言を書き込み続けています。
日本でも、多くの政治家や経営者がSNSを活用するようになりました。
たとえば、ソフトバンクの孫 正義氏もツイッターで発言することで個人ブランディングを確立、それが「ソフトバンク」という会社の信頼につながっています。
トランプ大統領や孫社長の事例は、大企業では少数です。
多くの大企業は、社長個人の発言が企業イメージに与えるデメリットを恐れてSNSに消極的なスタンスをとっています。
ここに小さな会社の活路があります。
社長のなかには、「忙しくて時間が取れない」、「炎上が怖い」といった理由から、SNSを敬遠している方もいるかと思います。私も以前はそう考えていたことがありました。
しかし、SNSには接触頻度を高めることで人との関係性を深めることができるという特性があり、これをビジネスに活用しないのはもったいないと思います。
社長は企業ブランドのシンボル的存在として、積極的にSNSを使って企業の理念を情報発信すべきです。
人間の脳は、忘れるようにできています。
「顧客に忘れられる」
これは、商品やサービスが売れなくなる大きな原因のひとつです。
営業マンが何度も得意先に顔出しするように、ブランドもお客さまとの接触頻度を高める必要があります。そしてお客さまが購入を検討した際に、最初に思い出してもらえるポジションをめざします。
一般に接触頻度と好感度は正比例します。
ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSでの接触回数が増えると、人はその人と頻繁に会っているような「錯覚」を覚えます。
できれば1日1回を目標にSNSへの投稿を続けてください。
社長個人のSNSでの発言に、「好感」「共感」を持った顧客は、
やがて企業に対しても「信頼」を持つようになります。
文章力は、書き続けるうちに高まっていくので心配無用です。
中小企業がSNSを企業ブランディングに活用しようとするときには、社長もしくは責任ある立場の人が行うべきです。企業を愛し、誇りを持っている責任者の気持ちは、たとえ、言葉足らずだとしても、お客さまの心に必ず届きます。
しかし、SNSやブログでは、人柄がにじみ出てしまうため注意も必要です。
こんな書き込み見たことはありませんか?
・ネガティブな話題ばかり書く社長
・売り込みばかり書く社長
・私生活を見せびらかす社長
・書いてはいけないことを書く社長
SNSを使ってみんなで楽しく趣味の話題で盛り上がっているときに、雰囲気を壊すような発言や、商品の売り込みをする人を、他の参加者はどう思うでしょうか?
お客さまの悪口やプライベート暴露、違法行為など一般常識で考えて書いてはいけないことを書く人を、他の参加者はどう思うでしょうか?
極端に多すぎる接触や、売り込みだけが目的の接触も、逆効果になるので注意が必要です。これは「他人の感情には無関心です」、「経営者として無能です」と道の真ん中で拡声器を使って叫んでいるのと一緒です。
いくら企業や商品のブランドを優れたデザインやコピーで飾り立てたとしても、社長の行動や発言がブランドコンセプトから外れていては、悪いクチコミの導火線となってしまいます。使い方を間違えると、SNSやブログは逆効果になります。
不特定多数の人に見られていることを意識して、自分の文章や写真が相手にどう伝わるかを常に意識しながら投稿する注意が必要です。
◇第1章のポイント
- ブランドは「狙って」つくる。
- ブランディングとは、お客さまの心のなかに
価値を刻み込むコミュニケーション活動。 - ブランディングは多額の予算が必要だったが、
インターネットやパブリシティを使えば
低予算でできるようになった。 - ブランディングは、大企業より
小さな会社の方が実は簡単である。
・お買い求めは、ジュンク堂姫路店、TSUTAYA太子店、TSUTAYA姫路広峰店、TSUTAYA姫路飾磨店、安井書店、Amazon 、楽天ブックス ほか
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堀田 周郎

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