こんにちは。
ブランディングコンサルタントの堀田周郎(ほりたのりお)です。
ブランディングについて「小さな会社だから」「BtoBだから」「自社ブランド製品はない」という理由で関係ないと考えている企業は多いかと思います。
しかし、ブランディングとは、綺麗なロゴマークをつくったり、高級品を売ることではなく「ターゲットの心に価値を伝えるためのコミュニケーション活動」です。
ブランドは、すべての企業に必要です。
4つのブランドから選ぶ
しかし、大手企業のように「企業ブランド」「事業ブランド」「ファミリーブランド」「個別ブランド」の4階層に細かく分けて考える必要はないと思います。
中小企業や個人商店は、1店突破をめざして「企業ブランド」「商品ブランド」に「商店ブランド」「個人ブランド」の2つを加えた4つのブランドの中からひとつを選び、ブランディングしていくのが成功への近道だと思います。
◇企業ブランド
ハードルは高いですが、お客さまが、商品やサービスを購入しようとするときに、「ここの会社の商品・サービスなら間違いない」「他社より少し高くてもここから買いたい」と一番最初に思い出してもらえる企業ブランドを構築できれば、大きなアドバンテージとなります。
また、企業ブランドが構築されると「取引先や銀行の信頼度向上」「従業員の帰属意識向上」「優秀な人材確保」などのメリットも同時に生まれます。
BtoBの会社も、自社ブランド製品がない会社も、価格競争から脱却するために「企業ブランド」は間違いなく必要です。
◇商品ブランド
商品の価値を伝えてブランドを構築する方法です。
前々回のブログで「トヨタなら何でも良いから乗りたいという人はいない」と書きましたが、プリウスに乗りたい、ランドクルーザーに乗りたいという人は多数います。これはそれぞれの車の価値が狙ったターゲットに伝わっているからです。
氷菓のガリガリ君のように、赤城乳業という会社は知らないけれど商品名は広く知れ渡っているというケースもあります。
「商品ブランド」ができると、たくさんの商品の中から選ばれるようになります。
製造業を行っている会社は、自社商品にオリジナルの名前をつけてブランド化を図るべきです。また個人経営の飲食店でも、例えば人気のメニューに名前をつけて、それがお客さまに認知されれば、立派な商品ブランドとなります。
◇商店ブランド
その店で買うことの価値を伝えて、店舗をブランド化するという考え方です。
ひとつの方法としては、他では入手しにくいブランド商品を扱うという方法があります。
ただ、この場合は商品供給が止まれば店の価値も一緒になくなってしまいますし、インターネットの普及で商圏エリアという概念が崩れてきた現在では店のブランド価値を保ち続けるのは難しいかもしれません。
もうひとつの方法は、その店の目利き(セレクト)が信用できる「機能的価値」や、そのお店で買う体験が楽しい「情緒的価値」をお客さまに伝えて、店舗をブランディングするという方法です。
「機能的価値」というと何やら難しそうですが、皆さんの街にも新鮮な魚を取り扱う魚屋や、おいしい野菜を取り揃えていると評判の八百屋はありませんか?これらは立派な商店ブランドです。
「情緒的価値」とは、そこで買うのが楽しい、好きだ。どうせ買うならそこから買いたいという感情から起こる商店ブランドです。
そして、商店ブランドにはそこで買うことが誇らしい。人に自慢できるという「自己表現的価値」の要素が含まれる場合があります。
高級セレクトショップで、定価で時計や装飾品を買う行為が「自己表現的価値」です。また、芦屋マダムが通う高級スーパーとして有名なイカリスーパーで夕飯の食材を買い込み、イカリの紙袋を持って高級外車に乗りこむというライフスタイルを送るのも「自己表現的価値」です。
商品の価値は売る場所によって変わります。
◇個人ブランド
起業家、士業、フリーランスの方は個人の能力や実績、人間的魅力といった価値をターゲットに伝えて「個人ブランド」を築くという方法があります。
その他のブランド構築と同じく、自分の「こう思われたい」という理想像を決めて、それ「らしく」振る舞うことからブランディングをスタートさせます。
また、中小企業や個人商店の場合は「社長のイメージ」=「企業のイメージ」でもありますので、社長の普段の言動、イメージが企業のブランドイメージになる場合があります。
ただ、あまりにも個人ブランドの占める割合が大きすぎる場合は、社長の交代や死去で企業ブランドの価値まで下がってしまう場合もあるので注意が必要です。
事例紹介(日本酒編)
私の好きな日本酒を例に取ってブランドの違いを説明してみます。
企業ブランド | 菊正宗酒造、月桂冠、黄桜 |
商品ブランド | 獺祭(旭酒造)、梵(加藤吉平商店) |
商店ブランド | 地酒.com |
個人ブランド | 佐野吾郎さん |
- 菊正宗酒造、黄桜、月桂冠は大手日本酒メーカーでブランド名と企業名が一緒。流石です。菊正宗と言えば辛口の酒、月桂冠と言えばマル、黄桜と言えば河童のCM(放送終了)が私の心の中に刻み込まれています(笑)
- 獺祭は山口県岩国市・旭酒造がつくる地酒。杜氏を置かず社員だけで徹底した品質管理の下、最高品質の日本酒をつくり、日本酒ブームの火付け役!ともいわれています。安部首相がオバマ大統領に贈ったことや、テレビ「ほこ×たて」への出演で話題を呼びました。
- 梵は福井県鯖江市・加藤吉平商店がつくる地酒。宮中晩餐会や政府専用機にも採用され、「梵」は世界約100の国と地域で商標登録されています。この蔵元のブランディングが秀逸なのは一番安い「梵」を飲んで評価されるのを嫌って「梵 夢は正夢」「梵 日本の翼」「梵 吉平」といった風にそれぞれの個別ブランド名とパッケージ(瓶の形)を採用しているところにあります。
- 地酒.comは、インターネット黎明期より運営する地酒のネットショップです。何が凄いかというと「獺祭」や「梵」が無名の頃から、この酒が旨いと売っていたことにあります。おかげで、地酒.comお薦めの酒は値段やスペックを見ることなしに買ってしまう悪い癖がついてしまいました。
- 佐野吾郎さんは地酒.comを運営する株式会社クラビシュの社長さんです。地酒に対する知識と熱い思いは、彼を知る全員が認めるところです。地酒.comは佐野吾郎さんあっての商店ブランドだと私は認識しています。
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・ブランディング コンサルタント・堀田周郎(兵庫県姫路市)

堀田 周郎

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